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決勝で鈴木陽向/山北奈緒(NTT東日本)に敗れた中西貴映/五十嵐有紗(BIPROGY)
注目ペアの成績は、準優勝だった。バドミントンの日本ランキングサーキットは5月24日に各種目の決勝戦を行い、女子ダブルスの中西貴映/五十嵐有紗(BIPROGY)は、0-2で鈴木陽向/山北奈緒(NTT東日本)に敗れた。中西は「今大会は、入りから、ずっと(プレー内容が)良くなくて、その分、自分たちの良い形を出すことにこだわり過ぎて、相手をあまり見れずにプレーする時間が長かった」と反省点を挙げた。決勝戦は、第1ゲームは相手に攻めさせ、守備から攻撃に転じる作戦だったが、押し切られて19-21。第2ゲームは積極的に攻撃を仕掛けたが、失うものがない相手が引かず、リスクを負わされる状況に追い込まれて12-21。まさかのストレート負けを喫し、ベスト4だった2018年以来7年ぶりに2人で挑んだ通称「ランサー」のタイトルには手が届かなかった。
五十嵐、女子ダブルスではシルバーコレクター?
試合後の取材対応を終えると、昨年の全日本社会人選手権、全日本総合選手権でも準優勝だった五十嵐は「また2位だ。シルバーコレクターじゃん。女子ダブルス、勝てないんだけど! インドで1回勝っただけ」と苦笑いをしていたが、インドオープンは、世界トップクラスの選手に出場が義務付けられるBWFワールドツアースーパー750。中西から「いや、それはすごいことだから」と突っ込まれていた。五十嵐は、これまで混合ダブルスで活動し、21年の東京、24年のパリで五輪2大会連続の銅メダルを獲得。パリ五輪後に渡辺勇大(J-POWER)とのペアを解消し、高校から実業団に進んだ当初は混合ダブルスと合わせて挑戦していた女子ダブルスへ転向した。櫻本絢子(ヨネックス)との新ペアで活動を始め、インドオープン優勝など成果を出したが、選手間の話し合いにより、今春にペアを解消。今大会は、中西の説明によると、パートナーの岩永鈴が負傷を抱えている状況のため、五十嵐に声をかけてペアを組むことになったという。
リーグ戦では味わえない、話し合いながら戦う楽しさ
大会の中で感覚をすり合わせていった2人
正規のペアではないが、これまでに何度もペアを組んで試合を行っている。中西が早稲田大からBIPROGYに進む2017年~18年に国内外の大会で組んでいただけでなく、近年も団体戦でペアを組んでいる。記憶に新しいのは、2023年シーズンの躍動だ。全日本実業団とS/Jリーグで、当時の日本A代表4組をすべて破る活躍を見せ、リーグでは最高殊勲選手賞も受賞した。だが、団体戦と個人戦では、感覚が違うという。五十嵐は、準々決勝の後で「リーグだと、いきなりシダマツ(パリ五輪銅メダルの志田千陽/松山奈未)戦とかで、自分たちが負けたらチームがピンチという状況だから、気持ち的には(どうにかして勝たないと)ヤバイという感じになる。でも、個人戦だと(1日ずつ)一戦一戦。中西さんとそうやって戦うのは久しぶり。最初は気を遣うところもあったと思う」と大会の中で感覚をすり合わせていく楽しさを感じていることに触れた。また、決勝戦の後にも「1日1日楽しくて、試合の中で話し合いながら、どうしたらいいか考えながらできたのが、すごく良かった。誰と組んでも強い選手を目指したい。2位で悔しいですけど、またいつか中西さんと挑戦できたらいいなと思います」と話した。
改善を意識するがゆえに、割り切りを欠いた場面も
一方、連戦だからこそ難しさを感じる部分もあった。大会初日の1回戦は、大苦戦。植村理央/去来川琴葉(豊田通商)に第1ゲームを奪われ、第2ゲームも中盤までは競る展開で冷や汗をかいた。初対戦の相手であることや、2人で個人戦に臨むことが久々であること、初戦であることなどの要素が絡み合い、2人は様子を見ながら試合に入ったが、相手はエンジン全開だった。前衛での強烈なスピードを武器とする五十嵐を後衛に追いやる作戦を徹底。中西/五十嵐は、リズムをつかむのに苦労した。中西は、2回戦の後に「(1回戦は)気持ちの部分で、有紗がやってくれるだろうみたいな気持ちが大きくなり過ぎた。(ペアを組んだ)リーグの時は、自分が100%の力を出せば絶対勝てると思っているけど、今回は、心のどこかで安心してしまっていたし、パニック状態になってしまった」と明かし、2回戦からは国際大会と同様の緊張感を持ち、準備の仕方を見直したことを明かした。
試合内容は、試合を追う毎に改善された。相手に強打を打たせ、レシーブで低い球を沈めると、五十嵐が前、中西が後ろの形を作り、攻撃に転じる形が増えていった。試合を重ねられるからこそ、修正していける。それが、個人戦で試合を積み重ねる楽しさにつながるのだが、試合が続くがゆえに、勝つだけでは満足できなくなる部分も出てくる。2回戦を終えた後、中西が改善点や次の試合に向けた修正点に言及すると、五十嵐が「でも、勝ってるじゃん。何があっても勝てばいいんだよ」と笑っていたが、リーグ戦ではできている割り切りと、個人戦だからこそ改善し続けたい意欲とが混ざり始めていた。
準決勝では、今井優歩(ほねごり相模原)/齋藤夏(PLENTY GLOBAL LINX)を相手にストレート勝ち寸前だったが、良い攻撃の形で決めきりたい気持ちが強くなり、相手に打たされる形になり、ファイナルゲームに持ち込まれた。そして、より大きなプレッシャーがかかる決勝戦では、若手の勢いに飲み込まれてしまった。
ランサー挑戦の「おかわり」ある?
中西は五十嵐に再挑戦を懇願?
2人で改善点を探して取り組む楽しさと、勝つために最適な手段を探して結果を得る難しさ。久々に組んで出場した個人戦は、その両方を感じる舞台となった。試合後は、明るい表情ではあったが、やはり負けたら悔しさを感じるのが選手というもの。中西は「いつになるか分からないけど、また、どこかでチャンスがあれば、もう1回だけお願い。ラストチャンスをもらおうかと」と五十嵐に再挑戦を懇願した。今回は岩永の負傷や、五十嵐のペア不在が重なったことで実現した機会。五十嵐は「来年?(タイミングが)ないでしょ」と実現困難と思われる要望に笑っていたが「このペアで優勝できなかったら、誰とだったら優勝できるんだろうという感じですけど、また出れる機会があれば出たい」と気持ちは前向きだった。
中西は、決勝後に空港へ向かい、本来のパートナーである岩永とシンガポールオープンに出場。普段の戦いに戻っていった。櫻本とのペア解消で今後の動向が注目されている五十嵐は、今後について「楽しみにしておいてください。それしか言えません」と意味深な発言を残した。ペア解消時には、スディルマン杯後に日本代表を辞退する意向であることを所属先は示していたが、現在も日本代表に残っている。それぞれの今後の挑戦の先に、再び中西/五十嵐ペアが実現する日は来るのだろうか。
文:平野貴也
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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